駅前の風景は、がらりと変わっていた。
当たり前か。この駅に通っていたのは、8年も前になる。それだけの時間があれば、街も変わる。人も変わる。
僕は切符の自販機に近い柱に凭れて、かつては見慣れていたはずの景色を、目の前に広がる街並みに重ねようとしてみた。
砂利が敷き詰められた駐車場は、大型のスーパーに変わっていた。
それにつられたように周りの小さな商店は姿を消し、コンビニやカラオケボックスの看板が目に付く。
細い路地に入る角の本屋だけが変わらずにそこにあって、帰りがけに雑誌を立ち読みしたことや、
栄子がそこで待っていたことなどを思い出した。
――あいつ、本なんか読んだっけか。
あの頃の栄子の面影は、今でも鮮明に思い浮かぶ。直線的な眉の下の、二重のはっきりした目。細く通った鼻筋、薄い唇。
慣れた化粧で彩られた今の栄子の顔を思い出した時、ふいに周りの風景が歪んだ。
それはあっけなく、現在の街並みに姿を変える。
小さく切り取られた空。ロータリーに集まるタクシーの列、無機質なコンクリートの壁。
「ごめん、お待たせ」
軽く息を弾ませた声に、僕は振り返った。ジーンズにパーカーという普段着姿の朋佳が、少し戸惑った笑顔で立っていた。
「いや。悪いな、急に誘って」
昨夜、亜希子を叔母さんの家まで送った帰り道で、僕は朋佳に電話を掛けた。
僕らが通っていた高校を見に行ってみないか、という誘いに、しばらく躊躇ったあとで承諾してくれた。
当時は、この駅前に並んで立つことなどなかった。教室以外の場所で覚えている朋佳は、あの夏休みの校庭だけだ。
「ううん。――卒業してから、初めて来たから……」
その先の言葉は必要なかった。すっかり色を変えた街並みに、しばらく黙って目を向ける。
「あ、あの本屋、まだあったんだ」
「うん。俺もあそこは覚えてる」
どこにどんな店があったか、誰と、どんな話をして歩いたか。にぎやかな日曜日の雑踏に、制服姿の僕らは紛れ込んでしまう。
「――じゃ、行くか」
「うん」
頷いた朋佳と歩き出そうとして、僕は足を止めた。彼女が、僕と反対の方向に向かったからだ。
「あれ、そっち?」
「あ、うん。あたしは、こっちから行ってたの」
僕は頭の中で8年前に通っていた道筋を思い返す。いくら何でも、道路までは移動していないだろう。
朋佳が行こうとしていたのは、狭い踏み切りを越えた細い道だった。
「そっちから、行けんの? 俺知らなかった」
「うん。かなり遠回りになるよ。20分くらいかかるかな」
「何でそんな……」
言いかけて僕は、言葉を飲み込んだ。ここなら、誰も、何も、言わない――。
「ああ、じゃ、そっちから行ってみるか」
「ううん。永峰君やみんなが通ってた道から行きたい。そっちを歩いてみたいな」
胸を突かれた。大勢の生徒達が当たり前に通って来た道は、朋佳にはどれだけ遠かったのだろう。
「……そっか」
「うん」
笑顔で頷く朋佳の細い肩に、手を回してしまいそうになる。
そうでなければ、その小さな手を掴んで、広い通りに連れて行きたかった。
誰も、何も言わない。君がどこで何をしようと、誰にも何も言わせない。もう、君は、自由なんだ。
伸ばしかけた左手を握り締めて、僕は笑顔を作る。朋佳の少し先に立って歩き、ジーンズのポケットに両手を突っ込んだ。
意外と、広かったんだな。
金網の向こうに広がる校庭を見渡して、僕はひとつ息を吐いた。
体育館とプールを新しくしたようで、僕の記憶の中とは、その位置を変えている。
卒業した頃に塗り替えられた校舎の壁も、すでに灰色にくすんで見えた。
「……こんなふう、だっけ」
朋佳の小さな呟きに苦笑で応え、正門の前に近付いて行く。当然、日曜日の学校の門は、施錠されていた。
「入れないね」
「ここからはな」
「え?」
「こっち、行ってみよう」
僕は校舎の裏に向けて、フェンスに沿って歩いた。裏門も施錠されているのを確かめ、その先の金網に手をかける。
「……確か、ここなんだけど……」
ペンキが剥げて錆の浮いた金網を、少し力を入れて左に動かすと、そのまま斜めに傾いた。
「うわ」
「な?」
秘密の隠れ家を見つけた子供のように、顔を見合わせて笑う。
「すごい、こんなところあったんだ」
「知ってるヤツは知ってる、抜け道。授業フケたい時とか、買い物に行きたい時とか。今でも使ってるヤツはいるんだろうな」
「もう伝統だね」
そう言って笑う朋佳に笑い返して、僕は空いた隙間から敷地内に潜り込んだ。
おそるおそる腰を屈めて金網をくぐる朋佳に、自然と手を差し出す。
少し冷たい小さな手を軽く握って引くと、朋佳が珍しそうな顔で周りを見回した。
ちょうどクラブの部室が並ぶ棟の裏手になる。人の気配はないが、あまり目立たないようにしたほうがいいだろう。
離したくない、という気持ちは確かにあったけれど、そのまま握っているのも不自然に思えて、朋佳の手から自分の手をほどいた。
「校庭のほう、行ってみよう。まだ、桜が残ってるだろ」
「お花見できるね。お弁当持ってくれば良かったな」
このあとでどこか適当な店に入って食事をしようと思っていた僕は、朋佳の呑気な言葉に吹き出した。
「……おかしい?」
「いやいや、だってさ、いくら卒業生ったって、ここで勝手に弁当広げてたらまずいだろ」
「まあ、そうだね」
笑いながら校舎の裏を回って、校庭に出る。
――変わらない、白っぽく乾いた地面。
場所を移した新しい体育館とプールの他は、周りに植えられた桜の木も、
ひび割れたコンクリートの水飲み場も、そのままそこにあった。
鉄棒の脇に、木製の背凭れのないベンチがあった。黙ったままでそこに向けて歩き、朋佳と並んで腰を下ろす。
どこかから、笑いさざめく声が聞こえるような気がする。
金属製のバットがボールを打ち上げる乾いた音、校舎の壁に反響する、人の話し声。
時折上がる歓声、校内放送のノイズ混じりの音。
「……広いね」
「そうだな」
校庭の砂埃を巻き上げた風が、桜並木を揺らす。
はらはらと、風に溶け込むように舞う花びらを目で追って、しばらくの間黙っていた。
「――岸田」
「ん?」
「3年の夏休みにさ、俺と会ったの覚えてる?」
花びらの行方を追っていた朋佳の視線が、僕のほうを向く。少しの間真顔で僕を見つめていた彼女が、小さく笑った。
「……うん。あったね、そんなこと。永峰君、覚えてたんだ」
「会社でおまえに会うまで、忘れてたけどな。……あの時、もっといろいろ話してみれば良かったと思った」
「あたしと?」
「うん」
再び視線が合う。思わず朋佳のほうに顔を近付けそうになって、ごまかすように視線を逸らした。
「何でそんなこと? 永峰君があたしと話したいなんて、変だよ」
「何だそりゃ」
僕は笑って、それでもどこかで、唇を噛みたい気持ちになった。
君はもう、自由だ。誰にも、何にも、責められることなどない。
むしろ責められるのは――。
「俺、やっぱまだ『スター』なわけ?」
「それはもういいよ」
どうやらツボにはまる単語だったらしく、朋佳がしばらく笑い転げる。一緒になって笑いながら、言うべき言葉を探した。
「ごめんね」
「え?」
突然言われた言葉に、朋佳の横顔に視線を向けた。次々に花びらを落とす桜を見つめていた朋佳が、ゆっくりとこちらを向く。
「ありがとう。あたしと、普通に話してくれて。食事に誘ってくれたり、電話やメールくれたり、嬉しかった」
「いや――俺が、岸田と話したいと思ったからさ。……あの頃、おまえが見ていたのはどんな景色だったのか、知りたいと思った」
「優しいね、永峰君は」
もう、苦笑するしかない。お兄さんみたい、話を聞いてくれる、優しい。
その仮面の形は、僕の素顔にどれだけ当てはまるのだろう。
「ほんとに優しかったら、高校の時におまえを放っておいたりしないだろ」
「ううん。あれはもう、自然淘汰だもの。あたしは、誰からも、何からも、消されていくの」
歌うような朋佳の声に、言葉を失う。ここにいることができなかった朋佳は、どこへ飛んで行ってしまったのか。
「おまえは、普通だよ。――あんなものは、バカな奴らがやった遊びに過ぎない。岸田は、犠牲になっただけだ」
「ありがとう」
微笑んで言う朋佳の横を、僕の言葉が通り過ぎていく。
「あたし、一日でいいから、永峰君になりたかった」
「は?」
「みんなと笑って話して、先生達にも真っ直ぐに向き合って、そこから見えるものを見てみたかった」
頭上には薄いブルーの空。水で溶いた、水彩絵の具の色だ。スプレイで吹き付けたような白い雲が、ゆっくりと動いて行く。
「……もう、何も変わらねぇよ」
「何が?」
「俺も、岸田も、ただの26歳の社会人だ。おまえもちゃんと仕事して、普通に暮らしてる。俺と、同じだろ」
思いがけず、縋るような視線に出会った。僕はそれを逸らすまいとして、真っ直ぐに朋佳の瞳を見つめ返した。
泣き出しそうに見えた朋佳の瞳が、ゆっくりと力が抜けたように細められる。
「……ありがとう」
「もう、いいって。ありがとうとかごめんなさいとか言うな。おまえに謝りたいのは……俺のほうだ」
朋佳が黙って首を横に振る。ジーンズの膝に、ぱたぱたっと音を立てて雫が落ちた。
「――岸田」
「ごめん、なさ……」
「謝るな」
僕は左手を伸ばして、朋佳の頭を抱え込んだ。行動してから、自然と動いたその動作に自分で驚く。
一瞬体を固くした朋佳を宥めるように、軽く髪を撫でた。
「もっと……いろんなものを見て、ここにいたかったな。でも、あたしは、卒業できる日が来るのが待ち遠しかった」
「うん」
息を潜めて。誰の目にも、誰の気にも触らないように。ひっそりと呼吸をしていた制服姿の朋佳を、抱きしめることができたなら。
「やっと卒業して、就職して、今度こそ――友達を作ろうと思った。
人の輪の中で、明るく笑って話したいと思った。そう、してきたつもり」
「……そっか」
朋佳の頭から手を離して、自分の膝の上に下ろすと、乾いた地面に視線を落とす。
「ちょっとやり過ぎたのかなあ」
明るい声を上げて、朋佳が空を見上げた。
つられて視線を上げると、さっきと変わらない小さな白い雲が、ふわりふわりと流れて行く。
「――彼の目に映るあたしは、元気で明るい、よく気の付く子だったみたい」
「前の、旦那さんか」
「うん。最初は電話で話したり、うちの会社に打ち合わせに来た時に少し話すくらいだったから、そういう自分でいられた。
付き合うことになってからも、自分をそう見せてた」
僕の中で、今まで作り上げた仮面が音を立てて崩れる。人当たりのいい、優しい、無難に事を進めていく自分が。
「……無理してたんだな」
「無理だと、思わなかった。思いたくなかった。彼と付き合ってることが、あたしが『普通』だと証明してくれるものだったから」
いったい、何に怒りを向ければいいのだろう。朋佳をここまで、崖のふちに追い詰めたものは、何だったんだろう。
「結婚しようって言われて、すぐに返事をしたわ。まだ20歳だったけど、すごく嬉しかった。
これであたしは『岸田』でなくなる。誰の前でも、幸せな顔で笑っていられる」
「………」
「でも、やっぱり、ダメだった。元気で明るいあたしは、どこかに逃げて行っちゃった。
だから、あたしは彼に、何もしてあげられなかった」
「なあ、違うよ」
僕は朋佳の視線を捕まえようとしたけれど、泣くのを堪えているような瞳は、真っ直ぐに桜並木を見つめていた。
「その、旦那さんに合わせようと努力してたんだろ? それを分かってもらえなかった。お互い言葉が足りなかった。
――おまえが悪いわけじゃない」
唇を噛んだ朋佳が、首を横に振った。どうすれば、どんな言葉でなら、この瞳に追い付けるんだ。
「彼が、好きだった。彼の役に立ちたかった。……あたしは、普通の奥さんにすらなれなかった」
「岸田」
「ごめん、ほんと、変な話になっちゃったね」
軽く弾みを付けてベンチから立ち上がった朋佳が、僕を見下ろして笑う。
――逆行に縁取られたその笑顔は、あの夏の校庭の、張り裂けそうな笑み。
「いや――そろそろ行くか。駅前で、昼飯食って行こう」
「うん」
笑って、少し足を速めて先を歩く朋佳は、振り返らなかった。
食事のあと、どこかに遊びに出よう、と、僕は思い切って言った。
もし時間があれば、とフォローするあたりに、僕の『仮面』の一部が残っている。
それに応えるように笑って、お台場に行ってみたい、と言う朋佳は、どこまでが彼女の素顔なんだろう。
電車を乗り継いで、にぎやかな街並みやイベント会場をひやかして、僕らは笑いながらたくさんの話をした。
きっと、当たり前のカップルに見えるだろう。朋佳の過去も、僕の仮面も、すれ違う人達には垣間見えることすらない。
僕は、軽く触れた朋佳の右手を引き寄せるように握った。
「――え?」
「いや、人多いし。……ダメ?」
「ううん」
少しうろたえながら笑顔を作って首を横に振る朋佳の手を握り直して、
青い色の濃さを増した空を見上げた僕は、陽射しを反射して回転する観覧車のゆっくりとした動きに目を留めた。
どちらからともなく視線を交わして、乗り場の列に並ぶ。やがて回って来たゴンドラに乗って向かい合って座り、
ドアを閉めると不思議な静けさに包まれた。
「久しぶり。観覧車なんて」
「だよな。遊園地とか滅多に行かないし」
しばらくは、華やかな地上とゆったりと漂う海と、白い雲が流れる空とのパノラマを見つめて黙っていた。
――僕は、いったい、誰なんだろう。
目の前に現れる出来事や、片付けなければならない仕事に追われているうちに、僕は僕とはぐれてしまったのだろうか。
高校生の頃の自分の中にあった、1本の芯のような力は、どこに消えたんだろう。
やるべき事をこなして、人と付き合って来て、どこかで道を外した覚えなどないのに、何かを見落としている気がする。
あるいはその『仮面』ですら、僕の一部には違いないのだろうか。すべてが自分であり、すべてが自分でない。
とりとめのない考えを巡らせて、僕は朋佳の横顔に視線を向けた。
ほんの少し口元に留めた笑みに、僕への気遣いや彼女の作る『自分』があって、
寂しさを隠し切れない瞳に、あの頃の朋佳や、今も彼女の中に残る『負い目』がある。
何がマイナスで、何がプラスだというのか。その遠くを見る瞳ですら、朋佳のものなのに。
ゴンドラが頂上近くまで上がって来て、僕は軽く腰を浮かせた。その気配に気付いた朋佳が、僕を見上げる。
視線を合わせて、僕の右手が彼女の頬に触れる。
驚いたように目を見開いたままの朋佳の唇に、僕は瞳を伏せて自分の唇を重ねた。
時間にして、3秒足らず。
吸い込んだ息を吐き出すことすら忘れて、朋佳が僕を見据える。僕は開きかけた口を閉じて、その視線を受け止めた。
――ごめん、と、言いそうになってしまうから。
ゴンドラは、ゆっくりと降下を始める。ガラスの向こうに隣のゴンドラの親子連れが見えて、朋佳が視線を落として息を吐いた。
「……怒った?」
さんざん考えた挙句に、バカみたいな言葉しか出てこない。
「そんなこと……ないけど」
少しづつ近付いてくる地上から、歓声が聞こえる。あの夏の校庭。反射する陽射し。打ち上げられた白いボール。
8年という時間を越えて、僕と朋佳は、黙って向かい合っていた。
春の空には、白い絵の具を薄めたような空気が広がっている。
交わす言葉も少なく、再び朋佳の手を握るきっかけも掴めず、
帰りの電車の中から見上げる空は、薄いブルーから白っぽいグレーに変わっていた。
夕食をどうしようか、と訊くと、明日も仕事だから今日はもう帰るね、と笑った。
その笑顔に笑い返す僕は、きっとまた何かを見落としてしまっている。
朋佳の部屋のあるアパートの前で、細い路地に向かい合って立っても、僕はまだその何かを探していた。
「今日は、ありがと。……じゃあ」
「朋佳」
思わず口にした名前に、ゴンドラの中と同じように彼女が息を止める。
「……って、呼んじゃダメかな」
「どうして?」
「どうしてって……」
「何が、楽しいの?」
「え?」
朋佳の瞳に残っていた笑みが、潮が引くみたいに消えていく。
昼間の校庭で見つめ返した時のような色を、その中に見付けた。
「この話をして、みんなで笑うつもり? 今度の同窓会で、いい話題ができたって」
「な……」
目の奥が痛むほど、僕の首から上に何かの力が加わった。耳の中が真空になったように、自分の鼓動がやけに大きく聞こえる。
「バカに、するなよ」
やっとのことで出した声は、怒りに震えているようにも、罪悪感に掠れているようにも聞こえた。
それに怯むことなく見返す朋佳の瞳に、時折見せていた強い光が宿る。
「確かに俺は、あの頃おまえに何もしてやれなかった。橋詰達と同じ位置にいるように見えたかも知れない。けど」
言い訳になるな、と、僕は自分の声に祈った。
この言葉だけは、何の飾りもなく、どんな仮面を被ることもなく、彼女に届いてほしかった。
「俺は、今のおまえを知りたい。会いたい。一緒にいたい。それは、他の誰も関係ない、俺だけの感情だ」
僕を見つめていた朋佳の瞳がゆっくりと醒めていった。
静かに首を横に振り、次に顔を上げた時には、いつもの笑顔が向けられている。
――届かない。
そう思った僕は、2階への階段を上がろうとする朋佳に慌てて声をかけた。
「なあ、少し、寄らせてもらえないか?」
「……え?」
「いや、違う。何かおまえ、誤解してるよ。もう少し、話させてもらいたい……んだけど」
言葉の終りは、哀しげな朋佳の瞳に吸い込まれた。僕は知らずに握り締めていた拳から力を抜き、大きく息を吐いた。
「分かった。……ごめん」
「ううん。じゃあ、ね」
僕の言葉を待たずに、階段を上る足音を残して、朋佳の背中が視界から消えた。
やがて鍵を外す音がして、奥のほうでドアの閉まる気配がした。
きつく目を閉じて、息を吸い込んで吐き出す。
踵を返して歩き出した僕は、どこかに落ちているであろう答えを、探し続けていた。