前身作品について語ろうシリーズ第三回。
今回はうちでも飛び抜けて地味なこちらのお二人にお越しいただきました。
洋一:言い方を丁寧にすればいいってもんじゃないよな。
M:ほっとけ。キミも社会人なら多少はそういう矛盾のもとに生活してるだろう。
衿子:なんか最近この人ヤサグレてるから、ヘタに抵抗しないほうがいいわよ?
M:そう。おとなしく話に付いて来い。
洋一:……ま、いいっすけどね。
M:えーと、んじゃま、最初に言っとくけど、前身作と「僕にできる」はまるっきり違う話だからヨロシク。
洋一:ヨロシク、と言われても(笑)。
M:とりあえず、春香は死なないし、衿子は出て来ないし。
衿子:えー、そうなんですか?
M:そうなんです。
洋一:それじゃ、どういう話だったわけさ。
M:まず、洋一と春香は数年前に一時期付き合ってて別れた仲。春香は洋一より五歳くらい年下でまだ学生。
衿子:……へー。
洋一:全然違うじゃねぇか。
M:だからそう言ったろ? んで、春香はもっと自由奔放で子供っぽい。
気まぐれに別れたはずの洋一に電話してきて、会ったりする。
衿子:で、モトサヤに戻るんですか?
M:いくら私が単純でも、それはない。結局、洋一と春香は絶対結ばれないというのは決まってた。
洋一:………。
M:おや。何の抗議もないね。
洋一:俺が何言ったって無駄だろうよ(苦笑)。
M:ああ、そういう他人と距離を置く態度なキャラなのは変わらないかな。
衿子:どっちにしても暗いんですね?
M:言っちゃったよ。
洋一:……いいけどさ。で、別れた彼女の春香から電話がきて、俺はどうするわけ。
M:軽くデートなどする。たまに連絡を取り合うようになる。
衿子:ふーん。
M:しかし春香は明るく「彼氏がいる」とか言うんだな。これが相手が妻子持ちだったりして。
洋一:何だそりゃ(笑)。
衿子:あらー……。不倫てことになるんですか。
M:まあ、そうだね。当然というか、洋一は春香を止める。が、聞かない。
悩んでるうちに、今まで女友達だった同僚と仲良くなったりする。
洋一:無理があるなぁ。
M:ありまくりだね。
衿子:でも、それが私の原型って感じかしら?
M:そうかもな。もうちょっとしっかりした大人の女性のイメージだけど。
洋一:結局、どうなるんだ?
M:キミは春香の身を案じつつも、同僚の女性と付き合い始める。
春香は自然と連絡をしてこなくなり、風の噂で誰かと結婚したということを聞く。
洋一:あ、そう。
M:つまらないだろう?
洋一:うん。
M:いいけどな、否定しなくても。
衿子:それがまた、ずいぶん変わったもんですね。
M:んー、簡単に言えば、この「僕にできる」はまるっきりの新作だったんだよ。ただ、洋一と春香に出て来てもらったっつうだけ。
洋一:にしても、キャラが違うんじゃねぇか?
M:春香の無邪気さと、洋一の余計な事に神経使い過ぎなところは残してるよ。
洋一:……あんまり褒められてる気がしないな。
M:褒めてないから。
洋一:あ、そう。
衿子:そんなこと言っても、自分としては一番気に入ってる作品じゃなかったんですか? うちは。
M:そうだよ。某出版社に掛け合ったのもこれだしな。
洋一:実現しなかったけどな。
M:んなこたぁ分かってたさ(笑)。プロが見てどう思うかを聞いてみたかっただけ。
衿子:本にするつもりはあったんですね。
M:そらそうさ。できるもんならなー。
洋一:地味だけどね。
M:まあね。他の作品ももちろん思い入れはあるけど、これはちょっと特別かな。
衿子:どう特別なんですか?
M:うーん、まず、冒頭のシーンが浮かんだんだよね。最初は、彼女が死ぬ瞬間にその夢を見たことにしようと思ったんだけど。
洋一:同じじゃないか。
M:いや、それだと何か、超能力物のファンタジーになりそうだったからさ。
洋一:で、あとから俺に言い訳をさせてるのか。
M:そうだね。あとは、主人公の男が泣くシーンを書きたかった。で、こうなった。
洋一:……何だかなぁ。
衿子:じゃ、私の「おまけ」とかはもう、自動的に発生したようなもんですね。
M:うん。だってキミ、影薄かったから。
衿子:ひっどー!
M:まあ、だから、衿子の中身も書いてみようとしたんじゃないかよ。
洋一:行き当たりばったりだなぁ、いつも。
M:ついでだから言っとくと、この前身作自体行き当たりばったりに発生した。
洋一:何だそれ。
M:「Dummy」の最初のタイトルが「三月物語」だったんだよね。
衿子:……どっかで聞いたような。
M:まあいいじゃん。冒頭が「三月半ば、僕は彼女に会った」で始まるんだ、そっちは。
洋一:で、それがうちと何の関係があるわけ。
M:次に浮かんだのが洋一と春香の話で、別れたあとの再会デートが五月。
衿子:まさか、それで「五月物語」なんじゃ……。
M:そうさ。
洋一:……単純にも程があるな。
M:そうね。その調子で十二ヶ月クリアしようかと思ったこともあったけど、無理だったわ。
洋一:ほんとに行き当たりばったりにできたんだな、うちの話は。
M:だからそう言ってるだろうさっきから。
衿子:それでもお気に入りなんですね?(笑)
M:そんなもんさ。書き上がるまでどうなるか分からん。この対談もな。
洋一:いいよもう、だいたい話は終ったろ。
M:あれ、春香の幽霊とか、出さなくていいのか?
洋一:それこそ訳の分からないオカルトファンタジーにする気か?
M:無理だね(笑) いいよ、帰っても。
衿子:私、会ってみたいけどなぁ、春香さん。
M:いや、思い出の中で美しく生きててもらってくれ。
洋一:だとさ。帰るか。
M:ああ、キミらも結婚するんだよな?
衿子:なんか、それっぽいことを言ってましたよね。
洋一:……まあ、近いうちに。
衿子:本当?
洋一:いや、あー……、また、今度話す。
M:いい加減はっきりせんか、キミは(笑)。
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||